小難しい哲学本だけ読むってのも
なかなか困難であることもあり
先日取り寄せたこの本も同時進行的に読んでいたりする。
ちょっとしたお目目汚し気分と言いましょうか。
マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF) (1999/06) フィリップ・K. ディック |
しかしこれ。
有名な映画であるところの
『マイノリティ・リポート』と『トータル・リコール』の
原作短編が載っている短編集で
その2本の映画は好きな映画というわけではないけど
非常に自分の未来へ思いを馳せる際の思考ベクトルに
多大なる影響を与えた作品で
その両方が、同じ人が原作だったとはしらなんだ。て話で。
映画より原作の方が良い。という話は
良くある話だけども
この2作に於いては
原作より映画の方が自分は好き。
というのも
自分が、何かにつけて例題に出したりする
この2作品の未来の世界観は
原作の中ではほとんど描かれてなくて
まあ、短編だからってのもあるかもしれないけど
とても単純明快に
リズミカル且つスピーディーにとんとんとストーリーが展開していって
つまりその・・・ストーリー重視なんだと思う。
でも
自分がこの2つの映画のどこが胸に刺さってたかと言うと
そういうとこじゃなくて
どっちかいうたら
ストーリーはほんとにどうでもよくて
つまり、これらの作品の中での問題点はどうでもよくて
とにもかくにも『世界観』だったのであって
その世界観ってのは
街中どこにいても、家の中にいたって
常にタイムリーに網膜をスキャンされ
それにより個人を特定され
今どこにいるかも把握され
そのデータをもとに
どこにいっても、その人に『ぴったりの』広告が繰り広がる世界。とか
金で『記憶を買う・取り換える』と言うよりもむしろ
邦題のごとくの『トータル・リコール』
トータルに、人生をリコール、つまり・・
あ、これ悪いけどチェンジね。
っていうノリで、自分の人生を自分の思うものと取り換えていただけちゃう。
そんなことができる世界。とかの話だ。
それによって巻き起こる事件はどうでもよく
そんな世界の中で何が起こったかというのもどうでもよく
そんな世界自体が、ものすごい衝撃だった。
正に夢のような話だと思った。
いつなん時も、どこにいても
自分、というのが果てしなく明らかになってしまっている世界は
非常に恐ろしいと感じたし
更にはプレコグという
予知能力ミュータントにより
事前に凶悪犯罪などが把握され
先に手を打たれ
『まだなんもしてないのに』なんかしたという事で逮捕されちゃって
それって
故意である場合、計画的・潜在的に殺人欲求がある場合ばかりではなくて
『流れでそうなっちゃうのよ』というようなものまで
先手うたれて逮捕されるって~と
まるっきりなんで!?っていう感じのまま投獄される。
すなわちそれ
本人にしてみたら『未遂も未遂、そんなつもりまるでなかったし!』と思ってるだろうから
冤罪被っちゃってる気分満載という
そんなことも少なくないわけで
ほんとにそれって怖い。と、自分は思った。
無自覚に悪者にされるのほど
不快で不本意で遺憾なこともないと思うからね。
まして投獄・永久追放とか、死刑なんかなったら目も当てられないわけで。
そしてほどなくして
実際の自分たちの世界にも
そのような『個人データ』を利用して
効率的に宣伝を繰り広げるシステムを導入したという
アメリカのスーパーのニュースを見かけて、ぞっとしたもんだった。
それからまたまたほどなくして
ネットサーフしている最中に
あの、Amazonのトップページに広がった『おすすめ商品』に驚愕。
そして
そんな『おすすめ商品』や『おすすめ広告』に
すっかり慣れ親しんじゃったボクらの元に
先ごろ
そのような『個人の趣味思考・行動パターン情報』などを元にした
タイムリーなマーケティング・システムが
さらに開発が進んでいるのだというニュースを見て
OMG・・な気分だったり。
たかだか自分ごときの趣味思考・行動パターンがリークされるなんて
何のこた~ないでしょ。と思うと思うんだけど
確かに
それだけ考えたら何のこた~ないが
そのシステムが開発された先に
ボクらの未来を
『何者かに』握られることになる可能性が
開発されてるってことだよな。と言うあたりまで
もわ~っと思いを馳せてみると
ぞっとせずにはいられないはずなんだ。
何か悪だくみをしようとしてるから怖いんじゃない。
自分たちの本質的な自由をみるみるしれっと知らぬ間に
奪おうとする『何か』の存在にぞっとするんだ。
このぞっとする世界はもうとっくに始まっていて
どんどん進んでいき『それが当たり前』の世界になってしまうのに違いないし
完全にそうなったとき、どんな統治社会が訪れるかとか考えたらもうね。
ほんとに恐ろしいんだけども、まあ、普通に何ともできない。
なすがまま、なっていくようにしかならない。
受け入れ、順応していくしか
自分たちにはおおよそ道がない。
対して
もう一つの方の未来システムである
人生取り換えっこシステムの方は
こちらはもう、ワクワクな感じで仕方なくて
このシステムのとっかかりが
自分が先日まではまっていたところの
『セカンドライフ』なんじゃないかと、半ば本気で思いこんでたほど
とっても期待しているところなんだけど
こっちは・・・進んでるのか、ただのファンタジーなのか、わからない。
これは
マトリックス 特別版 [DVD] (2000/03/17) キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン 他 |
『マトリックス』の世界観にも通じるように感じていて
そのうち、肉体とかどうでもよくなっちゃって
皆それぞれの意識だけが存在して
つまり、魂だけが存在してるみたいな世界になって
現実、というもの自体が曖昧になってくんじゃないの?とか
そう考えていくと、それはそれでぞっとするけど
自分の場合は、ぞっとするより、ワクワク感が勝つ。
どうせ何者かに握られて把握されて
いいように使われる世界になっちまうんなら
その中で、めいっぱい『思う通りに生きていいよ』みたいな
把握されいいように使うのの代償として
個々の快楽くらいは与えられたっていいんじゃないかとか思ってて
肉体がなくとも
例えそれが『仮想』であろうとも
ただの『思念・思ってるだけ』のデータでしかなかろうとも
本人が思いこんで、信じこんで、味わってられてるなら
それはオーライだし、それでいいんじゃないか。と思うから。
マトリックスの中で
赤いドレスの(理想の)美女を最高のタイミングで
自分の前に登場させるシーンとかあるでしょ。
ああいうの、最高だと思う。
それが実在してなくたって
TRUEじゃなくたって、なんだってかまわない。と、自分は思うから。
所詮ボクらはどのみち
できることも、考えることも、経験することも
何だってすべて『限られた中』でしかできやしないんだし
ほんならねえ?
チョイスできる、或いは
少なくとも、自分でチョイスした気でいられて楽しいなら
それでいいじゃん。て思うんだ。
それにしても
SFってファンタジーが基本な癖に
結構、実現されてきちゃったりもしてるから
おっかなかったり、すげえ!だったりで面白い。
未知の怪物や宇宙人がどうのあ~ののSFじゃなくて
こういう未来科学・倫理学・哲学系のSFは大好きだ。
怖いけど、ワクワクが勝つから。
トータル・リコールも
マイノリティ・リポートも
マトリックスも
多分もう、すぐそこ。
楽しい方向に発展しますよう、祈りつつ。
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